外観検査は製品の品質を保証するための重要な工程です。この記事では、従来からある外観検査の方法から、最新の外観検査までを紹介します。
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外観検査とは
外観検査とは、製品や部品の品質を確認するために実施する検査方法です。製品に傷・汚れ・変形などの異常が発生していないかを確認しています。製造業では、業界を問わず外観検査を実施しており、製品の品質を担保するためには欠かせない工程です。
外観検査の目的
外観検査の目的は次に挙げる二つがあります。外観検査は「不良を発見し、流出防止を図ること」だけが目的と考えられがちですが、それ以外にも重要な目的があります。
品質の保証
外観検査を実施しないと、製品や部品をお客様に納品するときに、不良品が混ざっていても気付かないで納品されてしまいます。製品によっては、不良品によって重大な事故が発生する可能性があります。そのような事態を防ぐために、外観検査によって不良の流出防止を図ることが一つ目の目的です。
品質の維持・向上
外観検査のもう一つの目的が、品質維持・向上です。不良を採取することで、不良の種類や数についてのデータを取得することができます。そのデータを分析することで不良の発生原因を特定し、対策を打つことが可能です。このように外観検査をすることによって、品質を向上させていくことができます。
外観検査の手法
外観検査には、検査内容や使用場面によって様々な手法があります。それぞれが、どのような時に使用され、どのような特徴があるのかを解説します。

外観検査の種類
全数検査と抜き取り検査の違いと役割の違いを解説します。
全数検査
全数検査では、全ての製品の品質確認を実施します。この検査は時間とコストがかかるため、通常は実施されません。しかし、製品の不良が人命に関わる場合など、厳しい品質基準がある場合に実施されます。
また、客先や社内で不良が発見されたときに、その波及範囲の製品を全数検査する場合があります。このような突発的な全数検査は、他の作業を停滞させ大きな損失に繋がります。
抜き取り検査
生産した製品から、規定された頻度で(100個中1個など)サンプルを抜き取り、そのサンプルの品質確認を実施する方法です。全数検査することが理想ですが、コストや人手の面から、抜き取り検査が採用されるケースが多くなっています。抜き取りの頻度や検査項目は、お客様とあらかじめ決めておくことが必要です。
外観検査の方法
従来、外観検査は目視検査のみで行われていました。現在では自動検査装置を導入する事が多くなっています。さらに、AIを活用した検査が実施されるケースも徐々に増えてきています。
目視検査
従来実施されていた方法で、人の目により製品の品質を確認します。生産ラインとは切り離されて、検査スペースなどを設けて実施されるケースが多いです。まれに、生産ライン内で流れている製品を目視でチェックするケースがありますが、現在はこのようなケースは少なくなっています。
メリットは、導入障壁が低く、人手さえあれば短期間で導入できることです。デメリットは、人手が必要なことや、不良の見逃しなどのリスクがあることです。また、検査員によって基準が違っていたり、検査スピードに差があったりすることも懸念点となります。
自動検査装置
人手の確保が難しい現在、主流になっている方法です。カメラで画像を取得し、取得した画像に対し、事前に作成した検査内容で判定を行う装置になります。生産ラインに組み込んで検査することで、人手をかけずに全数検査することも出来ます。
メリットは、人手が不要であることと、適切な設定をすれば不良見逃しのリスクを回避できることです。また、全数検査を容易に実施することが出来ることもあります。デメリットは、導入にコストがかかることと、不良の種類によっては検出が難しかったり、誤検出の恐れがあることです。
AIを活用した検査
近年では、AIの発達によりAIを活用した検査が導入されるケースがあります。メリットは、検査領域の設定や製品方向の統一が不要なことや、良品状態がばらついても判定が可能なことです。
デメリットは、導入のためには良品と不良品の画像データが大量に(少なくとも数百枚以上)必要なことと、誤った画像データを学習させると間違った判定をすることです。また、覚えさせていない不良の種類には対応できない場合があることもリスクとなります。
外観検査の実施タイミング
検査の実施タイミングは、「インライン検査」「オフライン検査」の2種類があります。
インライン検査
インライン検査は、生産ライン内で検査を実施することを指します。目視で実施する場合、全数検査は負担が多く、見逃しが発生しやすくなります。従って、抜き取り検査で実施することが多いです。
自動検査装置を使用する場合は、インラインで全数検査をするケースが多いです。リアルタイムで不良の判定が可能なので、不良発生時に迅速な対応が可能で、波及範囲を絞りやすくなります。
オフライン検査
オフライン検査は、生産ラインとは別の工程で実施する場合を指します。生産スピードによらず、全数検査することが出来ます。従って、目視で全数検査を実施する場合は、オフライン検査を採用することが多いです。
しかし、生産してから時間を置いて検査に入るため、生産中に不良が分からず不良を作り続けていたということが発生します。
また、自動検査装置が高価で生産ラインごとに設置できない場合や、生産ライン導入時には検査不要だったが後から検査が必要になった場合などは、オフラインで自動検査装置を使用することもあります。
外観検査の不良例
外観検査では、どのようなものを検出できるのかを解説します。また、業界別に発生しやすい不良についても挙げていきます。
検査項目
外観検査では下記のような項目について、品質確認を実施します。
寸法、形状、構造などは基準を決めやすく、判定がしやすい項目になります。色よりも下の項目については、人によって違っていたり、基準の設定が難しい項目です。
検査項目 | 検査内容 |
寸法 | 指定された寸法との違いを検査 |
形状 | 欠損、変形など、指定された形状との違いを検査 |
構造 | 部品の位置ずれなど組立の違いを検査 |
色 | 色ムラや変色などを検査 |
意匠・印刷 | 指定したデザインや文字の違いを検査 |
キズ | 製品表面のキズを検査 |
異物 | 製品に付着した異物や汚れを検査 |
見栄え | シワ、スジ、劣化、感触を検査 |
業界別不良例
外観検査でどのような不良を検出することが出来るのかを、業界別で見てみます。
参考文献:外観検査とは? (https://products.sint.co.jp/aisia-ad/blog/what-is-visual-inspection)
電子機器分野
電子機器分野の不良例を下図に示します。電子部品は、部品が非常に小さく目視での検査は難しく、検査精度も要求されます。
製品例 | 不良例 |
プリント基板 | 位置ずれ、断線、ショート |
はんだ | ボイド、はんだ不足、ピンホール |
半導体パッケージ | モールド不良による変形、パッケージのキズ・クラック |
液晶 | われ、欠け、変形、反り、 |
コネクタ | ピンやリードの曲がりや欠損 |
金属分野
金属分野の不良例を下図に示します。生産数量が多く、単価が安いため、目視による全数検査はあまり実施されません。抜き取り検査や自動検査での品質確認が一般的です。
製品例 | 不良例 |
ねじ、ボルト | 割れ、クラック、変形、ばり、寸法ずれ |
ベアリング | サビ、腐食、打痕、空気孔 |
溶接 | ピット、アンダーカット、割れ、 |
樹脂分野
樹脂分野の不良例を下図に示します。樹脂成形品とは、プラスチック加工品のことで、射出成形などにより加工されます。黒点など、樹脂独特の不良があります。
製品例 | 不良例 |
射出成形品 | ウエルドライン、バリ、反り、ボイド、ヒケ |
ボトルキャップ | 黒点、焼け、変色、汚れ |
参考文献:射出成形における成形不良の種類 (https://www.jmsltd.co.jp/media/airticle/a29)
外観検査の注意点
外観検査で一番重要なことは、不良品を流出させないことです。そのために必要な注意事項を解説します。
検査基準の明確化
検査するときに、どこまでが良品でどこからが不良品なのかを、線引きする必要があります。寸法などは明確な基準を設定しやすいですが、色や傷などの判定は線引きが曖昧になるケースが多いです。
特に、自動検査装置を使用する場合は、数値で判定するため基準が曖昧なまま導入すると、誤検出や見逃しなどの問題が後から発生することになります。
検査基準は、テキストや画像などで定義することが一般的ですが、それ以外に下記のようなものを用意しておくと良いでしょう。
・限度見本
良品と不良品であるかの判定の限度を示した見本です。この見本を基準に良品・不良品の判断を行います。自動検査装置の場合は、この限度見本を撮像し、規格の数値とすると良いでしょう。
・不良見本
限度見本の一種ですが、不良品となる製品の見本です。見逃しが予想される不良内容を明示しておくことで、不良流出リスクを軽減します。
・標準見本
良品となる製品の標準的な見本です。この見本から良品・不良品の判定が出来るわけではないので、限度見本や不良見本とあわせて活用する必要があります。
AI活用の注意点
AIが導入されていると、AIが勝手に学習して、最終的に100%正しく判定できるようになるというイメージを持つ人が多いです。しかし、実際は事前に何千枚もの画像を学習させ、事前検証を行うなど、導入までの工数がかかることが多いです。
上記の理由から、実際に導入されるケースはまだまだ少ないです。しかし、正しく導入できれば、非常に高精度で柔軟性も持った検査装置となるので、導入予算に余裕があれば、最先端の工場を目指すことができます。
まとめ
外観検査は、用途や予算などに応じて、どの方法で実施するのかを選択する必要があります。実施内容によっては、自動検査装置よりも目視検査のほうが良い場合もあります。
自動検査装置の導入や、AIを用いた検査装置の導入について検討したい方は、ぜひロボカルまでご相談ください。