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外観検査の自動化で人手不足を解消。検査自動化のフローを解説。

製造現場で欠かせない外観検査ですが、人手の検査では不良流出や人手不足が課題になっています。この記事で検査自動化のフローを学び、品質向上やコスト削減に取り組みましょう。

外観検査自動化とは

製造現場では、不良流出防止のために外観検査を実施しています。しかし、従来の目視による検査にはいくつかの課題があります。そこで、その課題解決のために必要なのが、検査の自動化です。自動検査機を導入することで、人手に頼らず信頼できる向上を目指すことが出来ます。

目視検査の課題

従来、工場で実施されていた検査は目視によるものでした。目視検査は導入障壁が低いため、人手さえあればかんたんに導入することができます。しかし、目視検査にはいくつかの課題があります。

ヒューマンエラーの発生

外観検査の一番の目的は、不良の流出防止です。しかし、目視による作業では、不良の見逃しが発生する可能性があり、その可能性をゼロにすることは難しいです。また、人によって判断基準が違う場合があるなど、一定の品質を保証することは簡単ではありません。

検査速度のばらつき

検査員によって検査速度が違うため、検査数量が予測しにくいことがあります。また、検査速度が速い検査員であっても、長時間の作業で集中力が落ちて、検査速度が低下することも考えられます。

人手不足

近年は検査人員の確保が難しく、目視検査を行うには人手が足りないことがあります。少ない人員で検査を実施することも可能ですが、一人一人の負担が増えて不良流出のリスクが上がることになります。

外観検査導入のメリット

外観検査を導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。外観検査導入によって、先程述べた目視検査の課題を解決することができます。

検査精度の向上

安定した撮像条件が整い、適切な検査フローを構築できれば、不良見逃しのリスクをゼロに近づけることが可能です。目視では、集中力や作業員によって検査基準がぶれたりしますが、同じ基準で検査し続けることができます。

検査速度の担保

検査機による自動検査では、毎回安定した検査速度で検査が可能です。さらに機械に自動検査装置を組み込むことで、生産速度に連動して全数検査することができます。

少人化

検査機の導入により、検査人員が不要になるため少人化に繋がります。さらに、不要になった検査員の活人化により、近年の人手不足の悩みも解消することが出来ます。

外観検査導入の課題

外観検査導入には数々のメリットがある反面、課題や注意点もあります。導入の際は、注意点を理解しておくことが大切です。

数値化が難しい不良の検出が困難

自動検査装置での検出のためには、不良の特徴を数値化して、閾値で切り分ける方法が一般的です。この方法では、寸法などの数値化しやすい検査項目であれば、100%に近い確立で切り分けが可能です。しかし、ワークの色味やキズなど、数値化が難しいものは検出の精度が落ちてしまうことがあります。

特に、下図に示した樹脂成形品の焼けなどは照明の当て方によって、画像データにした際の数値が変化することがあります。撮像ごとにワークの状態が変化するような場合は、検出が難しいことがあります。

参考文献:成形不良とは (https://www.fisa.co.jp/molding_term/molding_defects.html)

検査システムの構築が難しい場合がある

自動検査はカメラによる撮像によって、画像データを取得し、そのデータを元に検出を行います。画像データが毎回同じ状態で取得できれば、安定的な検出が可能です。しかし、撮像対象がフィルムのような形状が変化するものであった場合、安定的な画像の取得には工夫が必要です。
このような場合は照明の当て方を工夫したり、偏向フィルターを用いたりします。また、検査フロー上で二値化を行ったり、フィルターを入れて画像を加工する場合もあります。このような検査システムの構築のために、事前に検証を実施する必要があります。

柔軟な検査が難しい

目視検査では、製品の方向を自分に都合が良い方向に変更したり、過去に例のない不良内容に気付くことも可能です。しかし、自動検査装置の場合は、位置が変化することで検出できなくなったり、想定していない不良の検出が難しかったりします。

外観検査自動化のフロー

実際に外観検査を自動化する際には、どのような手順が必要なのでしょうか。そのフローを解説します。

要件定義

最初に検査のために必要な情報を収集します。検査自動化をする場合、自動検査装置を構築できるベンダーを活用することが一般的です。
自社で構築する場合でも、ベンダーを活用する場合でも、下記の情報が必要になります。

ワークの情報

どのようなワークの品質確認をするのかを示します。ワークの大きさや形状、材質などの情報を集めましょう。実際の製品サンプルが用意できるとスムーズです。

要求される検査速度

自動検査装置は生産ライン内に組み込む場合が多いです。従って、取り付ける機械の生産能力に追いつける検査速度が必須となります。
どうしても検査速度が間に合わない場合は、製品の流れを分けて同じ検査機を二台用意する場合などもあります。

検出したい不良の種類

事前の情報収集で最も大切なのが不良の種類の情報です。ここで正確な情報を得られるかどうかで、良い検査装置になるかが決まってきます。
代表的な検査項目としては、寸法・形状・印字・色味などがあります。対象のワークで発生する不良を網羅し、それぞれの検査基準を示す必要があります。工場では、ほとんどの場合品質基準が取り決められているので、その情報を参照するのが良いでしょう。

システム構成設計

システム構成は、一般的にはベンダーに設計を依頼しますが、自社で行う場合もあります。システム構成設計では、主に下記の内容を決めていきます。
・カメラの選定(台数、スペックの選定)
・照明の選定(照明の種類、照明の数、照明の設置位置)
・画像処理装置の選定(検査フローの比較、処理速度の比較)

カメラの選定

検査対象や検査内容によって、使用するカメラのスペックが変わってきます。下記の表に選定の際に確認するスペックを示します。

分解能(画素数、視野角)どのくらいの測定精度が必要かによって適切な分解能の選定が必要。
白黒orカラー白黒が一般的だが、不良の特徴を抽出するためにカラーが必要な場合はカラーを選定。
カメラサイズ装置の設置スペースにより、適切なサイズを選定。
伝送速度検査の速度に関わってくるため、必要な検査速度に応じて選定。

照明の選定

どのようなワークを撮像するのか、どのような不良を検出したいかによって、照明の種類や位置を検討する必要があります。主に、下記のような特徴に着目して選定していきます。

照明の種類リング照明、バー照明、ドーム照明、スポット照明など
照明の色白色、赤色、青色など。ワークの色によって選定。
照明の当て方反射照明、同軸照明、透過照明など
熱の影響熱が発生する照明はワークへの影響を考慮する

画像処理コントローラ

コントローラーとは、取得した画像データを処理して、不良を判定するシステムを搭載したものです。主に下記の観点で選定します。

処理の種類抽出したい不良の特徴を引き出すフィルタがあるのか
処理速度どのくらいの処理速度が必要なのか
AIの搭載有無AIによる判定が必要かどうか

撮像テスト・検査フロー作成

検査システムが完成したら、実際の不良サンプルを入手して、撮像テストを行います。実際にサンプルを撮像しながら、照明の設置位置や数を調整していきます。
安定した画像が得られたら、検査フローを構築していきます。検査フローは下記のような流れになります。

前処理

画像のノイズを除去したり、不良の特徴を出すためにフィルタを適用していきます。

特徴抽出

前処理した画像データから、寸法測定やキズの抽出をしていきます。

判定

抽出された特徴を、決められた閾値で区切って、良品・不良品の判定を行います。

出力

判定結果を出力し、画像データの保存を行います。また、設備と連動している場合は、不良を払い出す信号を送る場合もあります。

導入・初期管理

工場に導入したら、すぐに業務完了というわけではありません。実際の検出データをチェックし、過検出や見逃しが無いかを確認し、最終調整を行います。また、量産に入ってからもデータを採取し、工場責任者に異常なく検出できていることを確認してもらいましょう。

AIを用いた検査自動化

最近では、ここまで述べてきた自動化に加えて、AIを活用する場合が出てきています。特に、自動検査の課題を解決する可能性を秘めています。

AIによる検査自動化のメリット

AIの導入により期待できる効果を下記に示します。

数値化できない不良の検出

通常の外観検査自動化では難しかった、数値化できない不良の検出が可能になる可能性があります。膨大なデータから色などの特徴を掴み、人の目のような検出が期待できます。

柔軟な検査が可能

通常の外観検査では、検査領域の設定や検出対象の方向が制限されるなど、制約がありました。しかし、AIの導入により検査対象の方向を自動的に検出し、それに合わせて検査領域を移動させたりすることが出来ます。
また、形状の複雑なものは従来の自動検査では、領域の設定が難しい場合がありましたが、その場合も領域設定をせずに検出が可能です。

AIによる検査自動化の課題

上記のようなメリットがある反面、AIによる検査はまだまだ課題が多い分野でもあります。

膨大なデータの取り込みが必要

検査精度のためには、数百・数千枚という画像データが必要となります。この数が少ないと誤検出が発生したり、柔軟な対応も難しくなります。

システム構築の難易度が高い

より柔軟な検査を実施するためには、検査フローなどのシステムの構築が必要です。しかし、その構築には専門的な知識が必要だったりするため、専門メーカーへ依頼する場合が多いです。

まとめ

検査自動化は、工場の品質向上や製造コスト削減の観点から、重要な課題になっています。AIによる自動検査も年々精度を増しており、通常の自動検査と複合させて使うことも可能です。
検査自動化やAI自動検査の導入を検討されている方は、ぜひ一度Otokogi合同会社までお問い合わせください。