ネジ締め機は非常に多くのメーカーが製造していて、選定に苦労されたことはありませんか?本記事では各メーカーの特徴を整理して、導入に役立つ情報とともにご紹介します。
ネジ締め機をご検討の方やご興味のある方は、ぜひご覧ください。
ネジ締め機とは

ネジ締め機とは、人が行うネジの締結作業の一部またはすべてを補助する機械です。主な構成品は電動ドライバで、FA業界ではナットランナーと呼ばれることもあります。DIY作業などで使われる汎用の電動ドライバと異なり、ナットランナーはネジを締め付ける際にトルク制御を行っています。そのほかの構成品としては、下図のネジ供給機と呼ばれる装置があります。この機械は大量に投入したネジを、電動ドライバで拾いやすく方向を揃えて供給する機械です。

(参照元:日東精工 FF801H)
ネジ締め作業の自動化は、電動ドライバでネジ締め作業のみを自動化するか、人間の作業全体を自動化するかで、次の2つの方式に分類できます。
ハンディタイプ
ハンディタイプは、作業者が電動ドライバを手で持って作業するタイプです。
ネジ供給機を利用する場合と、利用せず作業者が供給する場合があります。
自動機タイプ
多関節型ロボットやスライド装置に電動ドライバを持たせて、人の作業を肩代わりさせるタイプです。この場合、ネジ供給機は必須となります。
ハンディタイプと自動機タイプのネジ締め機メーカー7選
ハンディタイプ、自動機タイプどちらも製造しているメーカーをご紹介します。電動ドライバ部分だけでなく、自動化装置のノウハウも保持しているため、心強い存在です。
日東精工株式会社
日東精工はネジ締め装置だけでなく、ネジ自体の製造も手がける大手企業です。ネジ締め機もハンディタイプから自動機タイプまで、ラインナップ豊富に扱っています。協働ロボット用のねじ締めユニットPD400URは98万円です。
(参考:オートメーション新聞)

(参照元:日東精工株式会社)
https://www.nittoseiko.co.jp
株式会社エスティック
エスティックは国内トップシェアを誇るネジ締め機を製造する企業です。ハンディタイプの電動ドライバが主力商品ですが、ロボットなどを使った自動組立ラインの製造も行っています。ハンディタイプのコントローラ他周辺機器含めた価格は100万円からとなっています。
引用:株主手帳

(参照元:株式会社エスティック)
https://www.estic.co.jp/products/#tightening
技研工業株式会社
技研工業は、自動装置用とハンディタイプの電動ドライバの他、ネジ締めを行う自動組立装置も手がけています。
https://gikenkogyo.com/prod-index.aspx
三洋機工株式会社
三洋機工は、自動装置用とハンディタイプの電動ドライバの他、ネジ締めや溶接を行う自動組立装置も製造しています。
https://www.sanyo-machine.co.jp/PageCommon/Product-Nejishime.htm
自動機タイプのネジ締め機メーカー3選
株式会社セザキ
セザキは、M1〜M4の小径ネジや特注ネジ用のネジ締め自動機を手がける会社です。他にも自動組立装置や、街路樹に鳥を寄せ付けないようにする装置も扱っています。
http://www.sezaki.co.jp/
株式会社ジャノメ

参照元:ジャノメ
ジャノメはミシンで有名ですが、スカラタイプ、直交タイプの産業用ロボットも製造しています。そのロボットを使った自動ねじ締め機をパッケージ化して販売しています。
参考:https://www.janome.co.jp/industrial.html
コアテック株式会社
コアテックは完全に自動機向けの電動ドライバを製造しています。その他に検査カメラなども扱っており、自社内でネジ締め機を用いた自動組立検査装置の製作が可能です。
ハンディタイプのネジ締め機メーカー6選
株式会社ハイオス
ハイオスは、特殊プラスネジの開発からスタートした企業です。メインのラインナップは、ハンディタイプの電動ドライバですが、他にネジ供給装置も販売しています。コンパクトなネジ供給機、ねじ太郎Ⅱは¥70000です。
第一電通株式会社
第一電通は電動ドライバが主力商品です。そのほか下図のような、電動ドライバに取り付けて反トルクを作業者に伝えないようにするチューブも製造しています。

(参照元:第一電通株式会社)
https://www.daiichi-dentsu.co.jp/products.html
瓜生製作株式会社
瓜生製作は、ハンディタイプの電動ドライバを製造しています。自動車関連の企業や家電メーカー向けに空圧・電動のパワーツール全般を製造している企業です。ハンディ電動ドライバUAN-F130は50万円からとなっています。
https://www.uryu.co.jp/products/
株式会社フジテック
フジテックは松下電器産業株式会社生産技術本部のネジ締め機の設計・製作・販売として スタートました。独立した現在は、ハンディタイプの電動ドライバを製造している他、1軸スライド自動機も扱っています。
https://www.neji-fujitec.co.jp/products
ハヤシレピック株式会社
ハヤシレピックは時計製造で培った精密加工・組立技術をもとに、小型で精密な電動ドライバを製造しています。ハンディタイプと自動機搭載用にそれぞれ、非常に小さなM0.6のネジを締める電動ドライバもラインナップされています。
https://www.h-repic.co.jp/products/electric_screwdriver/Hi_Matic_dc
株式会社バンガードシステムズ
バンガードシステムズは、ハヤシレピックと同じく小型で精密な電動ドライバを製造しています。ハンディタイプと自動機搭載用がラインナップされています。
導入へ向けて

本章ではネジ締め機の導入へ向けて、留意すべきポイントをご紹介します。
導入の流れ
まず、導入までの流れは下記の通りです。
- 自動化したい作業工程の明確化
- メリット・デメリットの整理
- 導入の相談
- 投資計画
ネジ締め機を導入すべき工程
一般的にまず自動化を検討するのは下記のような工程です。こちらを参考に、ネジ締め機を導入するターゲットとなる工程を定めましょう。
- 全工程のボトルネックとなっている時間がかかる工程
- 不良率の高い工程
- 作業員の負担が大きい工程(環境、作業姿勢、力が要るなど)
- 例外の少ない繰り返し作業工程
導入のメリット
作業時間の短縮
人間よりもネジ締め機の方が、ネジの供給から締めるまで圧倒的に早く作業を行うことができます。
品質向上
人間よりもネジ締め機の方が、精緻なトルク管理が可能です。
疲労軽減
人間の行うネジ締め作業は、手首を繰り返し回転させるため疲労度が高い作業です。ハンディタイプを導入するだけでも、作業員の疲労軽減が図れます。さらに快適ではない環境下や、きつい姿勢でのネジ締め作業、反トルクがかかる大きなネジ締めは疲労度も増しますので、自動機タイプで自動化が望まれる工程です。
不良率の低下
人間がネジ締め作業を行うと、トルク不足によるネジの脱落や、トルク過多で製品の雌ネジ部分を破損したりする可能性があります。ネジ締め機は締め付けトルクを管理できるので、これらの不良は起きません。さらに人間の作業で発生するネジの挿入忘れも、自動機タイプなら防止できるので、不良率を低下させることができます。
人員削減
自動機タイプの場合に限りますが、導入によって作業人員を削減できます。
導入のデメリット
導入コスト
ハンディタイプは数十万円から100万円、自動機タイプを導入すると数百万円から数千万円の導入コストがかかります。
設置スペース
自動機タイプを導入する場合は、装置本体の他に制御盤や安全柵を設置するスペースが必要です。現在の手動作業ラインの配置をなるべく変更したくない場合は、協働ロボットを導入するというデメリット解決方法もあります。
管理項目の増加
電動ドライバ先端の工具(ビット)は消耗品です。消耗品の交換サイクル管理や、ネジ供給機に追加するネジの管理が、新たに必要となります。
導入例
オムロン株式会社
オムロンは自社製品の組立工程に、ビジョンシステムを用いたネジ締めロボット装置を導入しました。下記サイトで動画を見ることができます。https://www.fa.omron.co.jp/product/robotics/lineup/collaborative/video/application12
パイオニア株式会社
パイオニアはカーナビ組立工程で、ネジ締め自動装置を導入しました。デンソーのロボットを使用して自社で自動システム化しました。1840万円の投資で生産性が6倍に向上したとのことです。
参考:日本ロボット工業会
フジセン技工株式会社
フジセン技工は川崎重工の双腕ロボットを活用したLMガイドのネジ締め工程を自動化しました。
導入の相談先
ハンディタイプのカタログ商品を導入するにしても、購入前に検証は必要です。さらにカタログ商品で対応できないような複雑な工程なら、アドバイザーも必要です。このような場合の相談先は、SIer(システムインテグレータ)です。ターゲット工程の自動化だけでなく、ライン全体の効率化提案などもしてもらうことができるでしょう。
投資計画
SIerの見積もりをもとに投資計画を立てましょう。仮に1千万円を超える見積もりであったとしても、自動機タイプなら人件費1年分で償却できるので、投資回収のプランも考えやすいです。最近では採用難や人件費の高騰の事情もあり、投資回収期間を3年以上としている企業も増えているようです。資金調達については、「ものづくり補助金」など国や自治体の補助金を活用する手もあります。
まとめ

ネジ締め機は数多くのメーカーが様々な製造していますが、それだけ多くのニーズがあることを示しています。人間よりも自動機のネジ締めの方が圧倒的に早く正確なので、導入効果も出しやすいでしょう。導入のキーポイントとしては、現状のネジ締め工程を見直して、特徴を理解して適切な製品を選択することです。それには、SIerにアドバイスを求めるのが良い方法です。
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