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工場の生産設備メンテナンス解説!トラブル・改善事例も紹介

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はじめに

製造業にとって、生産設備は“命”とも言える存在です。どれだけ優れた人材や原材料が揃っていても、設備が動かなければ製品は生まれません。

しかし、その大切な生産設備も、定期的なメンテナンスを怠れば確実に性能は劣化し、やがてトラブルを引き起こします。しかも、その損失は「機械が壊れた」という物理的な話にとどまりません。生産の停止、納期遅延、品質不良、顧客の信頼喪失、果ては利益率の悪化まで連鎖的に起こるのです。

本記事では、生産設備メンテナンスの基本知識から、現場で起こりがちなトラブルの実例、改善に繋がった対応事例までを紹介。Otokogi合同会社のようなメンテナンスパートナーの力を活用することの重要性についても触れていきます。


1. 生産設備メンテナンスとは

「生産設備」とは何を指すか?

生産設備とは、製造現場で使用されるあらゆる装置や機器を指します。たとえば:

  • 加工機械(NC旋盤、マシニングセンタなど)
  • 搬送設備(コンベア、リフター、ロボットアーム)
  • 空圧・油圧機器(エアシリンダ、油圧ユニットなど)
  • 電気制御系(シーケンサー、センサー、制御盤など)
  • 補助設備(コンプレッサー、冷却装置、排気装置など)

これらの設備が一体となって製品を生み出しているため、どこか一つでも不調が起きれば、全体の生産性に大きな影響が出るのです。

設備メンテナンスの目的

メンテナンスの目的はただ「壊れたものを直す」ことではありません。

  • 異常の早期発見と未然防止
  • 製品の品質維持と向上
  • 労働災害の予防
  • 設備の長寿命化
  • トータルコストの削減

といった、企業の生産力と安全性を支える役割を担っています。特に、不良品の発生やライン停止による損失を防ぐことは、利益確保に直結します。

メンテナンスが経営にも直結する理由

設備メンテナンスは現場の話ではなく、経営課題そのものです。

  • 稼働率の低下 → 生産能力の減少
  • 品質不良 → 顧客クレーム・信頼低下
  • 納期遅延 → 契約違反・売上減少

つまり、メンテナンス体制の強化は、**企業の競争力を左右する“攻めの投資”**とも言えるのです。


2. メンテナンスの種類と特徴

予防保全:スケジュールに基づいた点検・交換

予防保全は、一定の期間や使用時間ごとに設備を点検・部品交換する方法です。

  • メリット:突発停止が減り、計画的に保全できる
  • デメリット:劣化していない部品を交換する非効率性も

代表的な例として、月次点検、年次オーバーホールなどがあります。

事後保全:故障後の修理対応(コストと時間の負担大)

最もシンプルなのが事後保全。設備が壊れてから修理を行う方法です。

  • メリット:初期投資が少なく済む
  • デメリット:生産停止や安全リスク、対応費用が急増する

特に24時間稼働のラインでは、事後対応による損失が莫大になるため注意が必要です。

予知保全:センサーや稼働データを活用した予兆管理

IoT技術の発展により注目されているのが予知保全。

  • 振動、温度、電流などのデータをセンサーで常時取得
  • 異常の兆候をAIやアルゴリズムで分析
  • 故障する“前”に対処できる

投資コストは高めですが、ダウンタイムの最小化と保全精度の向上が期待できます。

TPM(Total Productive Maintenance)の考え方も紹介

TPMとは、全員参加型で生産性を最大化する保全活動の考え方です。

  • 現場作業者自身が日常点検や簡易整備を行う
  • 設備部門・生産部門・管理部門が連携
  • 故障ゼロ・不良ゼロ・事故ゼロを目指す

単なる“点検”ではなく、職場全体の改善文化づくりとしても注目されています。


3. よくあるトラブルと原因

設備メンテナンスを怠ると発生しやすいトラブル例

どんな工場でも、次のようなトラブルは決して他人事ではありません:

  • モーターの焼損:冷却不足・過負荷・グリス切れが原因
  • ベルトの劣化・断裂:張力過多や摩耗を放置した結果
  • ベアリングの破損:潤滑不良や異物混入
  • センサー誤動作:清掃不足による反応不良
  • 制御盤の短絡・過熱:ケーブル老朽化や端子のゆるみ

異音や異常振動を放置した結果、設備停止

「いつもと違う音がする」「少し揺れてる気がする」――こうした“違和感”を見逃すと、突発停止や致命的破損へとつながります。

センサーやモーターにわずかな異常があっても、生産現場では「今、動いてるから」とスルーされがちです。結果、稼働中に停止 → 品質ロス → 緊急対応…という悪循環が起きるのです。

定期的な清掃・潤滑を怠ったことでの機構不良

設備のトラブルの多くは、清掃不足と潤滑不良が起点です。ホコリ、切粉、油の付着は、誤作動や誤検知の原因になります。

潤滑が不足すると、摩擦熱が蓄積し、部品が焼き付き、破損に至ります。逆に言えば、**「油をさすだけで防げた事故」**は現場にいくつもあります。

電気設備の老朽化によるトラブル

電気系統も見落とされがちです。

  • ブレーカーの過熱
  • 配線の被覆割れ
  • 制御基板の劣化

目視だけでは判断が難しい箇所だからこそ、年次点検や絶縁抵抗チェックをルール化しておくことが大切です。

4. 現場での改善事例紹介

現場のメンテナンス課題は、単なる「修理」だけでは終わりません。トラブルの原因を掘り下げ、再発を防ぐ工夫こそが真の改善です。ここでは、実際の製造現場で起きたトラブルと、それに対する具体的な改善アクションを紹介します。

事例1:搬送ライン停止 → 異物混入防止ガイドを追加し再発防止

ある食品工場では、コンベアラインが突如停止。原因は、ライン脇から落ちた異物がベルトの下に挟まり、モーターに過負荷がかかったことでした。
そこで対策として、ライン周囲に異物混入防止のガイドプレートを追加し、定期的な目視確認ルールを明文化。以後、同様の停止は発生していません。

事例2:ベアリング破損 → グリスアップ周期を見直し、点検表を整備

機械部品製造現場にて、回転軸のベアリングが焼き付き、設備が長時間停止。調査の結果、グリス切れによる潤滑不足が原因でした。
対策として、グリスアップの間隔を「3カ月」から「毎月」へ見直し、さらにグリスアップの実施を点検表に記録する運用へ変更。予防保全の徹底が功を奏し、以降は異常兆候すら発生していません。

事例3:熱処理装置の故障 → 温度センサーをIoT化し、異常値通知を導入

金属部品の熱処理工程では、装置内部の温度が予定よりも大幅に上昇し、製品が不良化。
人の巡回点検では異常に気づけなかったことから、温度センサーをIoT対応型に変更し、クラウド経由で異常値を即時通知するシステムを導入。異常が起きても即対応が可能となり、製品ロスはほぼゼロに。

事例4:作業者による見逃し → チェック項目を標準化し、写真付きマニュアルに改善

別の現場では、「点検済」の報告があるにもかかわらず、部品の緩みが放置されていたケースがありました。属人的なチェックに限界があると判断し、点検項目を標準化しチェックリスト化。さらに、写真付きマニュアルを作成して作業品質を均一化。人によるばらつきが大きく減少しました。


5. メンテナンス体制と教育の重要性

どれほど立派な設備や仕組みがあっても、それを扱う「人材」の力が伴っていなければ、真の保全体制は成立しません。

属人化のリスクと引き継ぎの課題

ベテラン社員が長年の勘と経験で設備を守ってきた――というのは日本の製造現場でよくある光景です。しかし、そのノウハウが「頭の中」だけにある場合、退職や異動で技術が失われるリスクがあります。

属人化を防ぐには、点検手順の可視化と記録化、引き継ぎのルール化が不可欠です。

点検基準や作業手順のマニュアル化

点検基準は「感覚」ではなく「数値」や「明確なチェックポイント」で定義しましょう。

  • トルク値の管理
  • 温度上昇の許容範囲
  • 写真付きチェックシート

こうした定量的かつ視覚的なマニュアルを用意することで、誰でも一定水準の点検が行えるようになります。

保全担当者の育成/OJTと技術継承の仕組みづくり

OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)だけでなく、動画教材や教育プログラムの導入も有効です。さらに、技術者同士の横断的な情報共有会を設けることで、現場知見の属人化を防ぎます。


6. DXによるメンテナンスの高度化

近年の製造業では、デジタル技術を活用したメンテナンスの高度化が急速に進んでいます。

IoTセンサーで状態監視(振動・温度・圧力など)

各設備にセンサーを取り付け、リアルタイムで状態を取得することで、人の目だけでは発見しにくい変化も検知可能に。
振動センサーや温度センサー、油圧センサーなどが代表的です。

クラウド上での履歴管理とデータ分析

点検・修理履歴をクラウドに集約し、傾向分析や故障頻度の可視化が可能になります。
「この設備は3カ月おきに不調が出ている」「この部品は他より寿命が短い」といった改善のヒントが得られるのです。

AIを活用した故障予測の最新事例

AIが過去の故障データとリアルタイムデータを照合し、「このまま運転を続けると○日後に異常が出る可能性あり」と予測するシステムも登場しています。
これにより、保全活動が“計画”から“予測”へと進化しています。

導入コストとリターンのバランスの取り方

IoT・AIの導入には初期費用がかかりますが、突発停止の回避や製品不良率の削減により、数カ月〜数年で十分に回収できるケースも多いです。
まずは一部設備からスモールスタートするのが現実的です。


7. 外注によるメンテナンス支援という選択肢

メンテナンスをすべて内製でまかなうのは、多くの中小企業にとって大きな負担です。そこで注目されているのが、専門業者による外注保全という選択肢です。

外部パートナーの活用メリット

  • 緊急対応:故障時にすぐ駆けつけて復旧
  • 定期点検:設備ごとの点検計画と実施
  • 常駐保全:社内の保全人材として定着支援

専門技術を持った人材を、必要なときに、必要な場所へ派遣できるのが最大の強みです。

業者選定のポイントと注意点

  • 対応できる設備の種類が自社と合っているか
  • 24時間対応や全国出張などのフレキシビリティ
  • 点検後の報告書や履歴の記録レベル

こうした観点で信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。

内製・外注のハイブリッド運用も視野に

「すべて外注」ではなく、重要設備は外注、日常点検は内製というようなハイブリッド体制もおすすめです。
Otokogi合同会社では、全国3,000名以上の技術者ネットワークを活かし、常駐型・スポット対応のどちらにも柔軟に対応。貴社の保全体制の“もう一つの手”としてご活用いただけます。


まとめ|生産設備のメンテナンスは、品質と稼働を守る最前線

設備メンテナンスは単なる「点検作業」ではなく、製造業の品質と信頼を守る要の業務です。

  • トラブルは“防ぐ”から“活かす”へ
  • 改善事例を積み重ねて、生産性を底上げ
  • 内製・外注・DXを組み合わせ、自社に合った体制構築を

Otokogi合同会社は、**貴社の保全体制を強化する“右腕”**として、豊富な現場経験と人的リソースで伴走します。
設備メンテナンスの見直しをご検討の際は、ぜひご相談ください。