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NC研削盤とは?役割や加工の種類を徹底解説

ものづくりの工程は多岐にわたりますが、その中でも製品の最終仕上げを行うのがNC研削盤です。「終わり良ければ全て良し」という言葉があるように、製品の品質の最後の研削工程にかかってるといっても過言ではありません。本記事では、そんなNC研削盤の役割や種類、具体的なメーカーなどを紹介していきます。

NC研削盤とは何か?

NC研削盤とは、数値制御(NC:Numerical Control)が可能な研削盤のことを指します。研削盤は工作機械の一種で、特に高精度な面を作るために用いられます。機械に取り付けた砥石を高速で回転させながらワークに接触させ、表面を削り取ることで目的の形状や精度を得ます。研削盤の操作が数値制御されているところがNC研削盤の特徴で、コンピュータによる自動制御が可能です。そのため、作業者の技術に左右されず一定の品質を維持することができます。また、複雑な形状も作製することが可能です。なお、世の中にはNCの付いていない汎用研削盤も多く存在しており、比較的単純な形状のワークや少量生産品などの加工に広く用いられています。

研削とは?研削加工の基礎

研削加工とは、”砥石”という工具を使って、ワークを削る加工です。研削という字を分解すると、”研ぐ”と”削る”という意味が込められていることがわかります。身近なもので研ぐものといえば、包丁の刃物が挙げられます。砥石を用いて刃物を擦ることで、刃こぼれ部分を削り落とし、切れ味を回復させることができます。しかし、これは研ぐという行為であり、研削とはまた少し異なります。
“研ぐ”とは、砥石を使って磨く作業であり、”研磨”とも呼ばれています。一方で、研削は”削る”という字が入っていますので、磨くだけでなく、砥石を使って削る作業になります。砥石を使った作業では、研磨や研削という言葉は混同して使われますが、それぞれ違う意味として明確に定義されています。

研磨・・・寸法という概念がない”圧力転写加工”

研削・・・切込によって寸法を決める”運動転写加工”

研磨は、主に表面を綺麗にするという目的で行われるため、寸法という概念が存在しません。加工面が綺麗になりさえすれば良いのです。研磨は圧力のみを加えて行うので”圧力転写加工”と呼ばれます。一方、研削では砥石をどれくらい食い込ませるか(切込量)という寸法を厳密にコントロールします。表面を綺麗にして、かつ寸法を精密に定めるのが研削といえます。切込によって寸法が決まるため”運動転写加工”と呼ばれます。このように、一見すると似ているような研磨と研削ですが、寸法を決めることができるか否かで明確に種類が分かれています。

研削加工の役割

研磨加工は主に、製品の仕上げに用いられます。一般的な部品は、まず材料から切り出され、工作機械に取り付けられた後、切削加工で形作られます。その後、熱処理などの表面処理を行います。そして、最後の仕上げとして研削加工が行われます。ここで製品として完成するのですが、もし研削加工に失敗してしまうと、そこまでの工程のすべてが無意味になってしまいます。そういう意味でも研削加工は、最も重要な工程といえます。研削加工を行うことで、切削加工では得ることができない非常に高い表面性状と寸法精度を得ることができます。なお、研削加工は必ずしも全ての加工品で行われているわけではありません。工程が増え、加工コストも増すため、寸法精度や表面性状が必要な箇所のみに絞って行われます。仕上げとはいえ、どのような部品にも頻繁に行うような加工ではありません。

研削加工の種類

研削加工は大きく”円筒研削”と”平面研削”に分けることができます。

円筒研削

旋盤で加工した円筒ワークの仕上げに円筒研削が行われます。また、円筒研削の中でも内径を研削するものは内面研削、加工に芯を必要としないものを芯なし研削と言います。また、円筒研削の加工方法として、径方向に切り込む加工をプランジ研削、長手方向に削る加工をトラバース研削と呼びます。

平面研削

マシニングセンタ等で加工された平面の加工面には平面研削が行われます。また、平面研削の中でも砥石の回転方向や当て方によって加工の種類が変わります。また、平面研削の加工方法として、長手方向に切り込む加工をプランジ研削、短手方向に横切るような加工をトラバース研削、また斜めの軌跡で加工する方法をバイアス研削と呼びます。バイアス研削はあまり一般的ではありませんが、トラバース研削よりも加工面品位を良くしたい場合に用いられます。

NC研削盤の種類

円筒研削盤

最も一般的に普及している円筒研削盤です。回転させた円筒形状のワークに、回転する砥石を当てて、研削加工を行います。加工方法は旋盤と似ていますが、大きな違いは工具である砥石自身も高速回転していることです。

内面研削盤

内面研削盤は、穴の内径の研削に特化した研削盤です。内面研削は、穴の中を加工するため砥石のサイズに制限があったり、砥石の突き出しが長くなったり、制約条件が多く、加工が不安定になりやすいのが特徴です。研削盤の中でも、加工の難易度が高い加工です。

平面研削盤

平面研削盤は、ワークの平面を加工する研削盤です。矩形ワークを高精度に仕上げる為に用いられます。砥石軸の向きで種類が分かれます。砥石軸が地面に対して水平の場合は横型平面研削盤、砥石軸が地面に対して垂直の場合は立形平面研削盤と呼ばれます。一般的に広く使われているのは、横形の平面研削盤です。

センタレス研削盤

センタレス研削盤は、芯なし研削を行う特殊な研削盤です。チャックもセンター穴も不要で、まるで材料を転がすように研削加工を行う特殊な研削盤です。段取りも簡単なため、材料の自動供給装置と組み合わせれば、大量生産に対応できることが特徴です。一方で、円筒研削盤に比べて精度が劣ったり、複雑形状の研削が行えないなどの欠点もあります。

プロファイル研削盤

プロファイル研削盤は、先端が薄く尖った砥石を使い、ワークの輪郭を加工しながら目的の形状を作り出す研削盤です。プロファイルとは”輪郭”を意味し、この研削盤は倣い研削盤とも言われます。小物で複雑な形状をしている部品でも高精度な研削を行うことができます。

成形研削盤

成形研削盤は、砥石をワークの形状に合わせて精密に成形し、成形した砥石を用いて研削を行う研削盤です。砥石を任意形状に成形するための、ドレッサーが付いているのが特徴です。

ジグ研削盤

ジグ研削盤は、ジグ(または治具)と呼ばれる補助器具の穴や測定用のゲージを研削する特殊な研削盤です。砥石軸の位置を高精度に位置決めする機構を備えており、穴と穴の距離寸法などを高精度に仕上げることができます。

工具研削盤

工具研削盤は、その名の通り、工具を研削する研削盤です。工作機械で使われるエンドミルやドリルなどといった使用済みの工具を再研削し、再び使用できるようにします。工具形状が複雑であることから、工具研削盤もその複雑さに対応するため5軸や6軸といった多軸制御が行われます。

ねじ研削盤

ねじ研削盤は、その名の通り、ねじを研削するための研削盤です。ここでいうねじとは、一般的な締結用のねじではなく、工作機械の駆動系などに用いられるボールねじのことです。ねじ山を高精度に仕上げるため、ねじ用の特殊な砥石を用いて研削します。全ての工作機械の位置決め精度を司る重要な研削盤です。

グラインディングセンタ

グラインディングセンタは、研削と切削を一台の機械に集約した複合加工機の総称です。工作機械で切削加工されたワークは、仕上げのために一度取り外されて、再び研削盤に取り付けられて加工されるのが一般的な流れです。このような取り付け・取り外しは人の手で行われるため、工数がかかるのと同時に、取り付け誤差による加工寸法のズレが出る可能性があります。そこで昨今は、一台の機械で切削から研削までの工程を完了させることが可能なグラインディングセンタの開発が注目されています。

代表的なNC研削盤メーカー

日本の代表的なNC研削盤メーカーを紹介します。

株式会社アマダマシナリー

大手工作機械メーカーである株式会社アマダのグループ会社であり、プロファイル研削盤や平面研削盤などを製造・販売しています。

参考:https://www.amc.amada.co.jp/ja/

株式会社岡本工作機械製作所

老舗の工作機械メーカーであり、平面研削盤では世界トップシェアを誇ります。様々な研削盤を提供する広いラインナップも特徴です。

参考:https://www.okamoto.co.jp/

株式会社ジェイテクト

日本を代表する切削機械メーカーの1つです。トヨタグループに属する切削機械メーカーであり、マシニングセンタや研削盤の製造を行っています。研削盤では、円筒研削盤を中心に製造・販売しています。ジェイテクトは、切削機械の専業メーカーではなく、他にも自動車部品事業やベアリング事業なども行っています。 

参考:https://www.jtekt.co.jp/

株式会社ナガセインテグレックス

超精密加工を売りにしている工作機械メーカーです。特に鏡のような加工面を作り出す鏡面加工に定評があります。多くの種類の研削盤を製造・販売しています。

参考:https://www.nagase-i.jp/

ニデックマシンツール株式会社

日本電産グループ傘下の切削機械メーカーです。2021年に三菱重工工作機械株式会社が買収し、日本電産マシンツールに社名変更しました。更に2022年には老舗の工作機械メーカーOKKを買収し、更に製品のラインナップを増やしました。円筒研削盤や歯車研削盤を製造・販売しています。

参考:https://www.nidec.com/jp/nidec-machinetool/

牧野フライス精機株式会社

工具研削盤を専門とする工作機械メーカーです。似た名前の工作機械メーカーに株式会社牧野フライス製作所がありますが、兄弟会社ではあるものの別会社です。

参考:https://www.makinoseiki.co.jp/

株式会社不二越

NACHIのブランド名で知られる産業機械・機械要素メーカーです。工作機械事業部では、ねじ研削盤を製造・販売しています。

参考:https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/

三井精機工業株式会社

工作機械とコンプレッサを手掛ける産業機器メーカーです。研削盤では、ジグ研削盤やねじ研削盤を製造・販売しています。

参考:https://www.mitsuiseiki.co.jp/

オークマ株式会社

日本を代表する総合工作機械メーカーの一つです。あらゆるものを自社内で開発する高い技術力が特徴です。総合工作機械メーカーの中でも研削盤を取り扱っているメーカーは非常に珍しいです。主に円筒研削盤を製造・販売しています。

参考:https://www.okuma.co.jp/index.html

まとめ

本記事の要点を復習しましょう。

  • 研削加工は、部品の仕上げ工程で行われる重要な加工手段
  • “研削”と”研磨”の違いは、寸法を決めることができるかどうか
  • 研削は大きく分けて、”円筒研削”と”平面研削”がある
  • 日本には数多くのNC研削盤メーカーが存在する

NC研削盤は、日本の産業の根底を支える重要な工作機械です。日本が工作機械で世界をリードできているのも、この研削盤の性能に支えられてこそと言えるでしょう。一方で、数ある産業機械の中でも、日の目をみることの少ないマイナーな機械でもあります。本記事で、NC研削盤について少しでも理解を深めていただければと思います。