テレビで紹介されている最先端の工場現場では、人に代わって機械が作業しているシーンを見かけませんか?これがファクトリーオートメーション(FA)の力です。
FAとは、工場の生産ラインを自動化し、人間の手間を減らし、生産効率を向上させるシステムのことを指します。しかし、FAの全てを理解するのは簡単なことではありません。
そこで、本記事では次の内容について、FA業界で10年以上働いている筆者がわかりやすく解説します。
・ファクトリーオートメーション(FA)とは?
・FA化のメリット
・FA大手メーカー5選
この記事を読むと、FAについてはじめの一歩が学べ、工場の自動化をあなたのビジネスに活用するための最初の手がかりを見つけられると思います。ぜひ、最後まで読んでみてください。
Contents
ファクトリーオートメーション(FA)とは?

ファクトリーオートメーション(Factory Automation、略してFA)とは、工場の生産ラインを自動化する技術のことを指します。具体的には、生産ラインの工程を自動化するシステムや機器、ソフトウェアなどを包括的に指す言葉です。
FA化の最大の目的は、生産効率の向上です。人力に頼らずに生産することで、同じ時間内により多くの製品を生産できます。また、品質管理も一定の水準に保つことが可能になります。
さらに、FA化により工場内の作業環境改善も見込めます。たとえば、人間が行うには危険が伴う作業をロボットが行うことで、労働者は安全に働くことができます。
工場のFA化を手掛けるエンジニアはFAエンジニアと呼ばれています。関連記事に、FAエンジニアの仕事内容を解説しているので、ご参考ください。
FA化のメリット
自社の工場のFA化で、以下のようなメリットがあります。これらのメリットを最大限に活用するためには、適切なFA機器の導入が重要となります。
生産効率の向上
FA化が進んだ工場では、生産の多くを自動機器に任せて、人間の手間をなるべくかけないように生産ラインを構築しています。これにより、生産現場の一人当たり・一定の時間内に生産できる製品の数が増えます。
生産工程のすべてを自動化する必要はありません。自動化がしやすいところ、自動機器が得意な領域をFA化するだけでも、自社の生産性を上げることができます。
品質管理の一元化
FA化により、製品の品質管理が一元化され、より一定の品質を保つことが可能になります。
たとえば、接着剤を塗布する工程を考えてみます。人間の作業者だと接着剤の塗布量、塗布範囲にばらつきがでてきます。この工程をFA化すると、自動機器が毎回正確に接着剤を塗布し、接着後の状態を均一にできます。
労働者の安全確保
危険な作業を自動化機器やロボットが代行することで、労働者の安全が確保されます。
多くの製造業では、重い物の運搬、危険な材料の取り扱い、精密な作業など、人間にとって危険な作業が存在します。これらの作業の自動化で、労働者が業務中に直面するリスクを大幅に減らすことができます。
コスト削減
FA化により人手が必要な作業が減り、人件費を減らすことができます。自動機器の導入により初期費用・メンテナンス費用はかかりますが、それ以上に人件費を減らすことができればコスト削減のメリットがあります。
また、自動機器は24時間稼働可能なため、労働時間の制約を受けずに生産を最大化することができます。さらに、自動機器によって自動化を活用できれば、ヒューマンエラーを削減し、製品の廃棄や再作業によるコスト低減の見込みがあります。これらの要素が、FA化によるコスト削減のメリットを生み出します。
FA大手メーカー5選
ここではFA機器の大手メーカーを5つ挙げ、それぞれの特徴と強みを紹介します。
三菱電機

三菱電機のMELSEC iQ-Rシリ―ズ
出典元:https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/cnt/plc/index.html
三菱電機は、FA機器の分野で長年にわたり信頼されてきた大手メーカーです。
三菱電機の特徴その1:PLCの国内最大手
三菱電機の特徴は、PLCの国内最大手であることです。PLCとは、Programmable Logic Controllerの略で、工場の機器を統括して制御するコントローラです。FA化した工場の頭脳部分とも言えます。
三菱電機のPLCは「シーケンサ」という商品名で販売しており、その国内シェアは50%を超えています。あまりに三菱電機のPLCが使われるシーンが多いため、PLCそのもののことを「シーケンサ」と呼んでいる人もいるほどです。
参考URL:https://www.youtube.com/watch?v=Ar0VjVMqCM0
三菱電機の特徴その2:FA製品群の幅広さ
三菱電機の製品は、工場のFA化に必要な機器を幅広く揃えています。前述したPLC以外にも、次のような製品を製造・販売しています。
・産業用ロボット
・サーボドライブ、インバータ
・表示器
・電源機器(遮断器など)
・ビジョンセンサ―
三菱電機がFA機器の大手メーカーとして君臨し、多くの工場において選ばれる大きな理由のひとつは製品群の幅広さです。工場をFA化するためには、さまざまな装置を組み合わせる必要があります。その多くの機器が三菱電機からまとめて購入できるため、導入のしやすさ・価格交渉のしやすさでメリットがあります。
オムロン

オムロンのモバイルロボット
出典元:https://www.fa.omron.co.jp/product/robotics/lineup/mobile/feature/
オムロンといえば体温計をイメージする読者の方も多いと思いますが、FA機器においても有名なメーカーです。
オムロンの特徴その1:FA用センサーのラインナップが豊富
オムロンの制御機器は約20万点といわれており、特にFA用センサーのラインナップが豊富です。FA用センサーには、たとえば次のような製品があります。
・光学式近接センサー
・距離測定センサー
・超音波センサー
・圧力センサー
これらは工場の自動化・品質管理や異常の早期発見に使われています。
オムロンの特徴その2:ロボット事業に力を入れている
近年、オムロンはロボット事業の拡大に力を注いでいます。2015年に米国の産業用ロボットメーカーであるアデプトテクノロジー社を買収しました。これにより、ロボット製品を自社のラインナップに加えました。また、2021年には台湾の協働ロボットメーカーであるテックマン・ロボットに出資しました。
オムロンがロボット事業を強化する背景は、お客様の工場のFA化を幅広く提案することが狙いとみられています。
参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXLASHD16H2S_W5A910C1000000/
参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2740L0X21C21A2000000/
キーエンス

出典元:https://www.keyence.co.jp/company/business/
キーエンスはFA用センサーや画像処理システム、PLCを販売しています。キーエンスの特徴は、営業のサポートの素早さ・手厚さにあります。
キーエンスの特徴その1:営業のレスポンスが速い
キーエンス製品について問い合わせをすると、すぐに回答が返ってきます。筆者もキーエンスにPLCの問い合わせをした経験があるのですが、営業の回答スピードは他のメーカーと比べて段違いです。
キーエンスの特徴その2:営業が技術にも詳しい
キーエンスの営業は自社製品の使い方にも造詣が深く、技術的な問い合わせに的確に回答できます。営業自身が機器のデモンストレーションを打ち合わせの場所で行うため、製品の使い方のイメージをすぐにつかむことができます。
キーエンスの特徴その3:当日出荷
キーエンスは「全商品当日出荷」をうたい、すべての商品を当日出荷できるように準備しています。一般的に、FA機器の納期は、早くても1週間程度です。当日出荷はFA業界では非常に珍しい体制です。
工場でFA機器を使うユーザーは、部品が壊れたら新しいものがすぐにでも欲しいです。キーエンスの当日出荷体制は、FA化がすすむ工場にとっては非常に頼もしいです。
参考URL:https://www.keyence.co.jp/support/japan/service/
シーメンス

シーメンスはドイツを代表するFA機器メーカーです。シーメンスの製品は信頼性の高さと、多様なニーズに対応する幅広いラインアップで、世界のFA現場で導入されています。
シーメンスの特徴その1:多岐にわたるFA機器
シーメンスは、FA用センサーやモーター、PLCやFA用ソフトウェアまで、FA化のあらゆるニーズに対応した製品がそろっています。
FA機器のラインアップの幅広さを武器に、シーメンスはFA化を推進する企業にとって強力なパートナーの地位を確保しています。この特徴は、三菱電機とよく似ています。
シーメンスの特徴その2:DX化に力を入れている
シーメンスは工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に力を入れています。機器のデータを集め、それをもとに工場全体をシミュレーションすることで、生産工程を改善する手法があります。このような手法をデジタルツインと呼びます。
シーメンスは「プラントシミュレーション」というツールを使って工場全体をデジタルツイン化できます。工場でシーメンスのFA機器からデータを集め、分析し、デジタルツインで再現します。これにより、新しい生産ラインの立ち上げが速くなるなどの効果が期待されています。
シーメンスはFA機器を提供するだけでなく、「FA機器のデータを分析することで、新しい価値を創造する」DX化にまで踏み込んで提案できるメーカーです。
ロックウェル・オートメーション

アメリカのFA機器メーカーであるロックウェル・オートメーション(以後、ロックウェルと表記)は、1903年創業の老舗メーカーです。産業オートメーションのパイオニアとして、数多くの企業のFA化を支援してきました。
ロックウェルの特徴その1:世界的なPLC大手メーカー
PLCの世界大手メーカーは、次の4つです。
・シーメンス(独)
・ロックウェル(米)
・三菱電機(日)
・シュナイダー・エレクトリック(仏)
この4社でPLC市場の過半数を占めると言われています。ロックウェルは世界PLC大手の1角で、Allen-BradleyというブランドでPLCを販売しています。
参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC079BI0X00C23A2000000/
ロックウェルの特徴その2:工場のDX化支援に注力
ロックウェルは専属のDX戦略コンサルティングチームがあり、お客様の工場のDX化支援にも力を入れています。
ロックウェルはDX化のツールとして「Factory Talk」というソフトウェア製品をラインナップしています。Factory Talkは、データ収集・分析・分析結果の見える化を実現するソフトウェアです。これにより、工場の生産データを分析し、改善につなげることが可能となります。
DX化に力を入れているという点では、シーメンスと似た特徴といえます。
参考URL:https://www.rockwellautomation.com/en-us/products/software/factorytalk.html
まとめ
この記事では、FAとは何か、FA化のメリットと大手メーカー5選の解説をしました。今回の内容をまとめると、次のようになります。
・FA(ファクトリーオートメーション)とは、工場の生産ラインを自動化するシステムのこと
・FA化によって、生産効率の向上や労働者の安全確保、さらにはコスト削減などのメリットがある
・FA大手メーカー5選:三菱電機、オムロン、キーエンス、シーメンス、ロックウェル
FA化を推進する際には、信頼できるFA機器メーカーを選ぶことが重要です。今回紹介した5つのメーカーは、それぞれが独自の強みと特徴を持っています。これらのメーカーを理解し、自社のニーズに最適な製品を選ぶことで、FA化を成功させることができます。
「自社の生産システムにどのようなFA機器が最適なのかがわからない」
「中立的な立場から、おすすめFA機器と自動化方法を提案してほしい」
このようなお悩みを持つ方は、ぜひOtokogiまでご相談ください。
私たちOtokogiは、お客様の自動化支援のコンサルティングを行っています。OtokogiはFA機器メーカーの代理店や商社ではありません。そのため、特定のメーカーにしばられず、お客様にとって最適なFA機器を提案できます。
独自の自動化データベースや提携SIerさんとのネットワークをもとに、あなたの工場のFA化を実現いたします。