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設計段階での1ミリの油断が、現場で1か月の地獄を生む
製造業における“ものづくり”の現場は、日々進化し続けています。自動車、家電、医療機器、産業ロボット、工場設備――そのあらゆる製品が、高性能・高機能・短納期・低コストという四重苦を背負いながら市場に送り出されています。
その中で、**製品の性能や使いやすさ、コスト、製造性の“起点”となるのが「設計」**です。
設計職は、見た目のデザインだけを考える仕事ではありません。製品の“中身”を決め、量産できる仕組みに落とし込み、さらにメンテナンス性や安全性まで配慮する――いわば製造業の頭脳かつ中核を担う存在です。
この記事では、製造業における「設計職」の役割、仕事の流れ、そして種類ごとの特徴を、実務レベルでわかりやすく解説していきます。これから設計職を目指す方、異業種から製造業へ転職を検討する方にも、ぜひ参考にしていただきたい内容です。
設計職とは?製造業における役割と位置づけ
設計の仕事が担う価値と影響範囲
設計とは、「設計図(Drawing)を描くこと」だけではありません。
現代の設計職は、製品そのものの“実現可能性”を形にする仕事です。
- 製品が壊れずに動く構造か?
- コストが見合う材料か?
- 工場で再現性をもって作れるか?
- 規格・法令・安全性をクリアしているか?
これらをすべて考慮しながら、「こう作ればいい」が誰にとっても明確になる図面・仕様・データ」を設計する役割を担っています。
つまり、設計職の成果物は、図面や3Dデータのように“見える”アウトプットだけでなく、製品ライフサイクル全体に及ぶ“見えない価値”を設計しているとも言えるのです。
製品開発の流れと設計職の関与フェーズ
製品開発の大まかな流れは以下の通りです:
- 製品企画・市場ニーズの調査
- コンセプト設計・基本仕様の決定
- 詳細設計(構造・回路・制御・外装など)
- 試作・検証(性能試験・信頼性試験)
- 生産準備(治具・設備・量産図面)
- 量産開始・フィードバック反映
この中で、設計職は主に2〜5のフェーズに関与します。特に詳細設計〜試作の間は最も密に現場や他部門と連携しながら調整を進める局面となり、製品の完成度や製造性に直結する要です。
設計職と他職種(製造・品質・営業など)との関係
設計職は、「ひとりで完結する仕事」ではありません。むしろ、製造業の中で最も多くの職種と関わる立場だと言っても過言ではありません。
- 製造部門:組立しやすい構造か/治具や工具との整合性
- 品質保証部門:品質リスクがない設計か/FMEAやISOへの対応
- 調達・購買部門:コストや納期に合った部品選定か
- 営業部門:顧客ニーズや製品仕様との齟齬がないか
このように、設計は“もの”を作る仕事でありながら、“人”との調整力・折衝力も求められるハイブリッドな職種です。
製造業の設計職の主な種類と特徴
ここからは、製造業の現場で実際に存在する設計職の種類を紹介します。会社規模や製品分野によって名称や役割の境界は異なりますが、代表的な分類は以下のとおりです。
機械設計
「ネジ1本」の設計ミスが1億円を吹き飛ばす
▷ どんな仕事?
- 製品の筐体(外装)や内部機構の構造設計
- ギア・モーター・シャフト・カムなど駆動系部品の設計
- 熱や強度、応力、摩耗を考慮した材料・構造の検討
たとえばロボットアーム、印刷機、医療機器、空調機器など、「モノが動く」製品に欠かせない設計職です。
▷ 使用ツール・技術
- 3D CAD(SOLIDWORKS, NX, CATIA など)
- CAE(強度解析・熱解析)
- 公差設計・GD&T(幾何公差)など
構造だけでなく、生産性(加工しやすさ、組立しやすさ)までを考慮できると、一段上のスキルと評価されます。
電気設計
結線ミスひとつで製品丸ごとリコール
▷ どんな仕事?
- 製品の回路設計(アナログ/デジタル)
- 電装部品の配置・結線設計
- 制御盤・配電盤の筐体やレイアウトの設計
電気設計は、機械で言えば“神経系”。電源供給、信号処理、センサーとの接続など、製品の機能性を支える技術領域です。
▷ 使用ツール・技術
- E-CAD(ECAD、AutoCAD Electrical、OrCAD)
- 電気配線図(回路図、配線図、接続図)
- 部品表(BOM)管理との連携
- 電気安全規格(PSE、CEなど)知識
制御設計(ソフトウェア設計)
スマートファクトリー時代に“生き残れる設計者”とは?
▷ どんな仕事?
- 製品や設備を動かすための制御プログラムを作成
- PLC(シーケンサ)やマイコンへのプログラム実装
- センサー・モーター・表示器との通信・制御設定
特に近年では、IoTやAIと連携したスマートファクトリーにも関与することが多くなっており、ハードとソフトの両面理解が求められる職種です。
▷ 使用ツール・技術
- ラダー図(PLC)
- C言語、Pythonなどの組込み系プログラム
- SCADA・HMIソフト
- 各社PLC(MELSEC、OMRON、KEYENCEなど)に対応した制御ロジック構築
生産設備設計(工場用ライン設計など)
▷ どんな仕事?
- 工場内で使う自動組立機、搬送装置、検査装置などの設計
- 治具・ロボットアームなどの導入計画・構想設計
- 生産性・安全性・保全性のバランスを考慮
設備設計は“黒子”の存在ですが、量産効率やコスト競争力を左右する非常に重要な領域です。設計には構造知識だけでなく、現場視点の実用性重視の思考も求められます。
▷ 使用ツール・技術
- 3D CAD(機械設計と同じく)
- タクトタイム計算/工程設計
- 安全設計規格(ISO、JIS、CE対応)
- 治工具のカスタム設計ノウハウ
製品デザイン(工業デザイン)
▷ どんな仕事?
- 製品の**外観デザイン(形状・色・質感)**を設計
- ユーザーが手に取ったときの使いやすさ、操作性、印象まで設計
- 機能性・生産性・意匠性を高次元でバランスさせる
工業デザインは「見た目を美しくするだけの仕事」ではありません。操作ミスを減らすボタン配置、直感的に理解できるインターフェース、ブランドを体現するデザイン――製品とユーザーとの“体験”を設計する仕事なのです。
▷ 使用ツール・技術
- 3Dモデリングソフト(Rhinoceros、Alias、SolidWorks)
- レンダリング・デザイン検証ツール(KeyShot、VRED)
- ユーザーインタビュー・プロトタイピング手法
製造業では、デザインと量産性(コスト・成形方法)を両立させるセンスが問われます。
設計職の具体的な仕事内容とは?
設計職とひとことで言っても、日々の業務は多岐にわたります。以下、代表的な仕事を紹介します。
図面作成・モデリング(3D CADなど)
- 製品形状や部品構成を3D CADで設計
- 組立図・部品図・公差指示などの製造用図面の作成
- 干渉チェック、重心・重量の解析なども並行して行う
要求仕様の確認と技術的な検討
- 顧客要求、社内マーケティング要件を読み解き
- 技術的に実現可能な仕様に落とし込み
- 新しい材料・工法の調査・評価
設計段階での“仕様詰め”の甘さが、後々大きな問題を引き起こすため、ここは特に重要です。
試作・評価と設計の修正
- 試作品を製作し、性能・耐久・信頼性試験を実施
- 結果をもとに設計の改良・補強・軽量化を行う
- 失敗を糧に、より良い設計を作り込む
試作評価は設計者にとっての成長の場でもあり、現物を見て初めて気付く設計上の改善点も多くあります。
他部門との連携(製造・購買・品質)
- 製造現場との作りやすさ調整
- 購買部門と部品コスト・納期交渉
- 品質保証部門と検査基準のすり合わせ
設計職は**“社内ハブ”**とも言われ、調整・折衝のスキルが問われるシーンが非常に多いです。
開発進捗やコストの管理
- WBS(作業分解構成図)による進捗管理
- コスト推移のモニタリングと対策
- 不測の事態に備えたリスク管理
単に「良いものを作る」だけでなく、「限られた時間と予算で、最適解を導き出す」ことが求められる役割です。
設計職に求められるスキルと資質
設計職は高度な専門知識だけでなく、マインド面・汎用スキルも非常に重要です。
論理的思考力と問題解決力
- なぜこの形状が必要か
- なぜこの不具合が発生したか
- なぜこの材料を選ぶべきか
すべてを論理的に組み立て、説明できる力が問われます。
ソフトウェアスキル(CAD、CAE、制御ソフトなど)
- CAD操作の速さと正確さ
- CAE解析スキル(構造解析、熱解析など)
- 制御設計ならラダー図作成、プログラミング知識
「ツールを使える」だけでなく、「目的に応じて使いこなせる」レベルが期待されます。
チームでのコミュニケーション力
- 製造現場との擦り合わせ
- 品質部門とのチェックフロー構築
- 営業・顧客との仕様認識合わせ
一方通行ではなく、双方向コミュニケーションを意識することが設計業務成功のカギです。
細部への注意力と全体視点のバランス
- ネジ一本の選定ミスが、後々大問題に
- 逆に細部にとらわれすぎて、全体スケジュールを遅らせないようにする
設計者には、「木を見て森も見る」視点の切り替え力が求められます。
設計職のキャリアパスと将来性
設計職には多彩なキャリアパスが広がっています。
スペシャリスト or マネジメントの道
- 技術を極める「スペシャリスト型」
- プロジェクトマネジメント・組織運営に進む「マネジメント型」
どちらの道もニーズがあり、自身の志向性次第で選択できます。
DX・AI時代の設計スキルの変化
- CAE自動化
- ジェネレーティブデザイン(AI設計支援)
- IoTデータによる設計最適化
単なる“設計作業”ではなく、「設計プロセスを変革できるエンジニア」が強く求められる時代になっています。
技術者不足と今後のニーズの高まり
少子高齢化・技術継承問題により、設計職人材はどの分野でも引く手あまたです。
特に若手の設計者には、チャレンジできるポジションが豊富にあります。
💡Otokogi合同会社では、製造業向けの「設計支援サービス」や「技術者派遣・紹介」も行っており、
現場で即戦力となる設計技術者の育成・マッチングにも力を入れています。
まとめ:ものづくりの未来を支える「設計職」の魅力とは
設計職の多様性とやりがい
- 機械・電気・制御・デザイン――様々な専門性
- 「自分が考えたものが形になる」という達成感
- 現場との一体感、プロジェクト成功の喜び
設計は、ものづくりの心臓部であり、クリエイティブな仕事でもあるのです。
自分の特性に合った設計分野の見つけ方
- コツコツ形を作るのが好き → 機械設計
- ロジックで回路を組み立てたい → 電気設計
- ソフトとハードの融合に興味 → 制御設計
- 人に使われるデザインにこだわりたい → 工業デザイン
あなたの興味や得意分野に応じたキャリアを見つけることが、長期的な満足感につながります。
Otokogi合同会社は、ものづくりの未来をともに支えるパートナーです。
- 設計業務支援(機械・電気・制御・設備設計)
- 設計プロセス改善コンサルティング(DFM/コスト削減提案)
- 若手設計者の育成・派遣/即戦力エンジニアのご紹介
現場を知り、設計の本質を知る――そんなOtokogiだからこそ、製造業の設計力向上に本気でコミットします。
今、設計力を高めた企業だけが、未来の競争を制します。
まずは小さな相談から、御社の“勝てる設計力”を一緒に描きましょう。
👉 お問い合わせはこちらから(※仮リンク)